結城信一セザンヌの山・空の細道』(講談社文芸文庫)
就職試験の行き帰りの電車内で。どれも短い作品。その中に、死と時間の経過があるのに、凝縮されているように感じない。水彩画のような淡さ。「蛍草――柿ノ木坂」は25歳にもなって親のスネかじりをしている私の耳に痛い。いや耳に痛いというような健康的な反応よりも、もっと重いものを残した。