・『どん底』(監督ジャン・ルノアール)、『カップルズ』(監督エドワード・ヤン)、『ゴーリキー・パーク』(監督マイケル・アプテッド)、『暗黒街の顔役』(監督ハワード・ホークス)、『耳に残るは君の歌声』(監督サリー・ポッター)を観る。『どん底』『カップルズ』『暗黒街の顔役』の3本が特に面白かった。ハワード・ホークスの映画ははじめてみた。自動車に乗っているシーンでは窓の外が合成になったりしているが、そんなことは気にならない迫力がある。ボスからも疎まれるほど暴力的で強引な男の出世から破滅までがテンポよく描かれていて飽きないし、仕草とか、裏の意味を含ませた会話とかは格好よかった。『どん底』は原作未読、黒澤明のを観たことだけあった。単に社会的に悲惨な境遇に追いやられている人たちの哀切が嘆かれたり告発的に描かれているのではなく、がつがつと金を稼ぐことをしない、一種の自由人として、彼らというかその代表者たるジャン・ギャバン演じる主人公を捉えている。最後のシーン、主人公と恋人の女性とが草むらで寝転がっているシーンが、その上に広がる空ともども、それまでの暗いじめじめしたオンボロ下宿とはうってかわった開放感を感じさせた。