塚本晋也監督『六月の蛇』を観る。1人の女と2人の男。女は電話でこころの悩み相談を受ける、心裡カウンセラーのような仕事をしている。1人の男は女の亭主で、潔癖症でインポテンツなのかセックスレスの生活を続ける、会社人間。もう1人の男は、ヴァイブレーターなどの器具を専門に撮っているカメラマンで、死にたい、と電話をかけた相手がその女だった。カメラマンの男が女の自慰行為を盗み撮りしたことから映画は展開していくが、女を演じる黒沢あすかのエロを期待していると、はぐらかされた気になるかもしれない。初めは少しやらしくて、少しおかしい感じが、途中から意外な事に、哀しい話へと変っていく。所々、寺山修司の映画かと思うような奇妙なシュールな映像が差し挟まれるが、よく分からないのでそこは素通りして、三人の男女の行く末を見届けた。夫は神足裕司が、カメラマンは塚本晋也が演じている。神足裕司がはまっていたように思う。
・「蹴りたい背中」を読んだときにも感じたが、変態と純愛というのはそうかけ離れたものではないのかも知れない。問題は、二項対立の弊害と言うか、本来は対立するのではない概念が、勝手に正反対のものとして流通している。そしてそれに捉われている。それだけかもしれない。