綿矢「蹴りたい」について

◇ハツのにな川に対する倒錯気味の愛情(関心?)という不健康さ、教室で孤立している生徒という不健康さを、彼女が陸上部に所属しているということが、救っているというか。実際に読む前に聞いていたあらすじからは、絶対に主人公は帰宅部だと思っていたが。この不健康さと健康さのギャップは何なのだろう。たとえば会田誠の小説『青春と変態』ではスキー部に、塩田明彦の映画『月光の囁き』では剣道部に所属している主人公の、変態行為が描かれている。以前この日記にもちょっと書いたが、いわゆる学者の分析する中高生像には、あまり体育会系の部活動の話は出てこない。分析する必要が無いからかもしれないが、田舎の学生の生活ではやはり今でも運動系の部活が存在感を持っているのではないだろうか。