漫画

  • 佐藤智一『思い出スタンプ』(集英社)

手紙にまつわる話5編。はじめと終わりが親子の話で、あいだの3つが男女の話。私は、男女の話よりも親子の話に圧倒的に引かれるので、ここでも1話と5話が好きで、特に5話「鳩の飼い方」は良かった。でも巻末の作者による解題ではこの作品について「昔は夏ものの話が多かったような気がする。入道雲セミの声を描いていれば満足していたみたいな……安易だなあ。」と書いてあって、私も自分の安易さをちょっと反省。でも、青空に向かって飛び立つ伝書鳩の絵は、やっぱり良いと思った。

同時収録されている作者のデビュー作「ゆくところ」が面白かった。右手右足に小児麻痺を抱える高校生と、彼に恋する同性愛者の同級生との、時に不用意な言葉で傷つけあいながらも続いていき、少し深まっていく交流。お互いが背負った、少し暗い過去や家庭の問題がお互いの口から語られ、たまにぶつかり溶け合いそうになるのだが、過剰な干渉まで到らなくて爽やかな印象をもたらす。