『ペーパー・ムーン』

一人の女性の埋葬から物語は始まる。残された一人娘と、花を手向けに来た男との、二人旅。ライアン・オニールテイタム・オニールという実の父娘によって演じられている。タイトルの『ペーパー・ムーン』というのは、ライアン演ずる男が少女の父親と噂されながらも曖昧に済まされているということや、男のはたらく詐欺行為、それらを象徴しているのだろう。或いは、映画というもの自体を指しているのかも。紙で作られた月のように、それが偽者であったとしても、それを観る者/それに触れる者との間に生じる思いは価値を持つ、というようなことを。
話の展開は意外性を持っているわけではないが、テンポがよく、役者と映像で十分に満足する。

こういう種類の、大人と子どもの話が好きだ。『都会のアリス』『グロリア』『レオン』『依頼人』など。先日観た『非・バランス』なんてまさにこの系列ではないか!と今気づく。控えめな声でK・コスナー主演『パーフェクトワールド』も付け加えておこう。お互いに身寄りのない者同士の往く道、自堕落な大人としっかり者の子ども、というのが多い。
正確に言うと、多分私は、広義の友情物語が好きなのだ。