◇『アマチュア』(監督:キェシロフスキ、1976年)
◇『傷跡』(監督:キェシロフスキ、1979年)
2作ともキェシロフスキ初期の作品。ポーランド時代に撮られたものとのことで、政治的・社会的な色の強いものになっていて、ドキュメンタリー風のつくりになっている。とはいっても『アマチュア』のほうは、(映画)カメラ狂いの主人公が勤める工場での、経営者サイドからの圧迫が描かれているくらいのもので、話の本筋は、結婚をして子供も生まれ、求めていた幸せな生活を手にした主人公の男が、娘の成長を記録しようと、2か月分の給料をはたいて8mの映画カメラを買ったことから、人生が横に逸れていってしまう様、にある。男が作品作りに夢中になって家庭が疎かになってしまうのは悲しい。一方、男の作る映画自体はアマチュアの映画祭で入賞し、また友人の亡き母を写した貴重な記録としても生かされる、意味のあるものである。そのジレンマ。『傷跡』のほうは、発展の遅れている地方を開発するために中央から派遣されてきたエリート技官が、その正義感や誠実さゆえに、住民の支持を得られなくなり、やがて上層部からも非難を受ける立場に追い込まれる様を描いている。住民からも中央からも、更には妻や娘からも理解をされない、技官の孤独・孤立がすごく伝わってくる。また、それだからといって技官は完璧に正しい人かというと、そうでもなく、言葉が足りなかったり、やはりエリート意識を持っていたりするところがあって、そこがまたうまい。この人が、趣味としてカメラをいじっているのも面白い。
◇『秘密の子供』(監督:フィリップ・ガレル、1979年)
淡々と進みます。薬で病院に収容されたり、浮気があったり、母親との死別があったりと、ストーリイは決して単調ではないのだけど。省略が多いからか、薄暗い画面が多いからか、二人の出会いから実質的な破局まで、流れるように進んでいく。とにかく、過剰な説明や起承転結の細かな部分がそぎ落とされている。そのために、個々の映像の連結、繋がりが緩いのだが、それでも挿入される印象的な音楽と写真のように美しい個々の映像でストーリィを引っ張る。長い長い回想を見せられている感じで、それは女に振り回されてもなかなか別れられなかった男の側が、やっと過ぎ去った日々として振り返ることが出来るようになったのだけれど、女への恨みや嫉妬よりも愛情が勝ってしまって、どうしても美しい景色が思い出されてしまう、というような。主演の女優(アンヌ・ヴィアゼムスキー)、ゴダールの妻、かつフランソワ・モーリアックの娘らしい
◇他には『キューポラのある街』と『キリング・フィールド』を。『キューポラ』は吉永小百合演じる中学3年生とその兄弟たちの姿が生き生きとしていて気持ちよい。人によっては、すこし健全すぎて説教臭く感じるかもしれない。途中で、健全な青少年の育成を謳った市役所の垂れ幕が写されるシーンがあって、そのときは皮肉かと思っていたのだが、観終わってみると、あの言葉はそのままのメッセージとして投げかけられていた気がする。そういえば『秘密の子供』には「私に説教しないでね」というような台詞が出てくる。