12月22日の3本について

『信子』
おんな版「坊ちゃん」といわれた作品らしい。小宮山信子(高峰)は、女学校教員として九州から上京してくる。体育担当になった彼女は訛りをからかわれるなど、なかなか教師生活に馴染めない。加えて、下宿先が芸妓屋であることが校長にばれて、学生寮に舎監として住むことになる。夜中に忍び込んだ泥棒を退治した彼女は生徒からの人気を集めるが、ただ1人、細川頴子のみは何かというと反抗的な態度を示す。なぜか、他の教師も細川の生活態度は正そうとしない。彼女の父親は学園に多大の寄付をしているのだった。
高峰三枝子の健康的な活躍が気持ち良いが、どこか色っぽさが。声のせいだろうか。体操シーンの手足の切れのある動きと掛け声。同僚教師とワガママ生徒との双方を相手に、まっすぐに正しい道を目指そうとする姿。
『港の日本娘』
サイレント。日系2世の色男ヘンリーと、彼に好意を持つ砂子、ドラ、ヨー子の3人の女性。4人の姿が、砂子とヨー子の学生時代と、それから十数年を経た時期の2つに分けて描かれている。砂子とヨー子の友情で飾られた学生時代と、砂子とドラが身を持ち崩してしまった暗い時代とが対照的。
『リヨンの鐘』
第二次大戦中、日本の支配下にある台湾の山村に住む「高砂族」。美しい少女リヨンは、子どもの世話をしながら暮らしている。黒豚や鶏の飼育をするなど、穏やかな生活が続き、その生活は日本に留学していた恋人が帰ってきたことで、ますます楽しいものになっていく、はずであったが。
第2次対戦中、国策映画として作られたらしい。高砂族の人が進んで日本語を学び抵抗なく用いたり、駐留する日本軍人との信頼関係が出来ていたり、勇んで出兵に赴くシーンなど、たしかに国威発揚を目的としている点は目につくが、リヨンと子どもたちの楽しく暮らす姿が、壮大な自然の景色や喜劇的な行進(ガチョウを従えてリヨンと子どもたちが道を往くシーンなど)を交えて映されていて、この幸福な日常生活が力を入れて撮られていることが感じられ、戦地の悲惨さや戦争の愚かさを暗に批判/否定しているのではないかと思われた。子どもが赤ちゃんを背負って山登りをするシーンも印象的。