ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』(集英社文庫)
鴻上尚史『鴻上の知恵 完結編』(朝日新聞社)
僕達は、汗水流して働いている人に非日常と生きていく元気を感じてもらうのが虚業としての誠実だと思っています。」(28頁)
モノを作ることの厳しさ、金を稼ぐことの厳しさ、をしっかりと認識している鴻上氏のこの言葉はまっとうで優しい。いや、まっとう過ぎる。

大島弓子『ロスト ハウス』(白泉社文庫)
ハズレなし。全部傑作だと思う。
福満しげゆき『まだ旅立ってもいないのに』(青林工藝舎
ついに買ってしまった。それもよりによって今日のような自分の駄目駄目ぶりを思い知らされる日に。どの作品も期待以上の満足感。あとがきで作者は、「おじさんのうた」(うだつのあがらない中年サラリーマンが、ボクシングの選手としてリングに上がる話)は映画「キッズリターン」を観て描こうと思った作品、といっている。短編集のタイトルにもなってる「まだ旅立ってもいないのに」という言葉や、帯に書いてある「まだ何もはじまっていないのに」というフレーズも、「キッズリターン」のラストシーンを連想させるのだが関係あるのだろうか。あるときは主役として、またあるときは脇役として、しょっちゅう出てくる(というかほとんどの作品に出てくる)バーコード頭のおじさんがいるのだが、このおじさんの吹っ切れ方が、鬱屈とした若者の心に突き刺さるとまではいかなくても、小さな波を立ててくれる。それとエロへの情熱ね。ぼいんとパンチラという、これまた古風なエロスです。