『不安と魂』(監督R・W・ファスビンダー
最終回を迎えた柳下毅一郎「激殺!映画ザンマイ」(『ぴあ』にて連載。単行本が発売中ISBN:483560086X)で触れられていたので気になって。「登場人物が全員エゴむき出しの嫌な人間」と書いてあったので期待して観たけれど、私には熟女の純愛物語に思えました。嫉妬ばっかしている周りの人たちも、苛々させられるよりは滑稽にみえた。同じ監督の『ベルリン・アレクサンダー広場』は、見事に魅力的な人物を欠いた、不快指数の高い映画だったが、それと較べるとかなりスッキリした作品では。
ファスビンダー作品の登場人物の不快さは、ブニュエル作品のそれに通じるものがある。前者は社会の下のほうで足の引っ張り合いをしているような種類のもので、後者は現実感覚の欠落したブルジョワ階層が享楽にふけるようなものだけど。