しりあがり寿『流星課長』(竹書房)
『少年マーケッター五郎』『ヒゲのOL薮内笹子』とともにサラリーマン3部作を成している。『薮内笹子』には負けると思うけれどこの作品も十分に強烈。総理大臣が満員電車で席取りをするサラリーマンを見て、まだまだ日本人には力がある!という感慨を抱くシーンがある。以前、私が朝7時台の中央線に乗って通学していた時に発見したのは、満員電車に乗っている人たち(通勤する会社員、通学する学生、高校生などなど)は意外にマナーが良いし、“譲り合いの心”も持ってるように見えたし、つまりは他の人たちを思いやる余裕を持って乗車している、という事実だった。中央線の朝夕の混雑状況は十分に誇れるレベルの酷さだと思うが、そんな中でも、実際に利用している人たちの大半は善意の人である。(何かトラブルが起きたときに積極的に行動する人が出てくるかどうかは分からないが。)その意味では、この総理大臣が抱く感慨のようなパワーすら、現代の日本人は失っているということになるのだろうか。へんに物分かりが良くなっているということになるのだろうか。『ららら科学の子』で、道路渋滞にひとつも文句をいわずにいる多くの運転者達を見て、主人公が驚くシーンがあったが、それを思い出す。

雁須磨子『いちごが好きでもあかならとまれ』