上野動物園を徘徊

 この前、作家の青野聰さんとしゃべっていたら、青野さんも動物園が好きだということがわかった。それで、なぜ動物園が好きかというと、動物園は病的だから好きだということもいっしょだった。(中略)
 動物園の動物はすごく暗い。だから、こっちの方がものすごく暗い時、動物園に行くと、その程度のことで暗くなっている自分が恥ずかしくなってくる。そして元気が出てくることが多い。
高橋源一郎『平凡王』より)

この日は、天候に恵まれていたこともあったのか、動物は結構活発に動き回っていた。ゴリラは葉をむしゃむしゃと食べていたし、トラの子どもたちはじゃれ合っていた。パンダも白熊もヒグマものっしのっしと運動していた。
思うのだけれど、僕らが動物を一番バランスよく見られる場所というのはそもそも存在しない。図鑑やテレビ番組やドラマなどを通して知っている動物の姿、その姿や動きを、僕らの目の前に観ることはそもそも無理な話なのだ。本当に、活き活きと生きている彼らを見たければ、アフリカやアマゾンにでも出かけていくしかないだろう。それだって、いまの時代、本当に人間の管理の届いていない地域は限られているだろうし、またそんな場所で、都合よく動物の姿を捉えられる可能性はとても低い。
だから病的だろうと、僕は動物園でみる動物たちは、やはりとても貴重なものなのだと思っている。