三田誠広『書く前に読もう超明解文学史』(集英社文庫)
三田誠広という作家のことを知ったのは、高校生のとき。当時受講していた某ベネッセの通信添削で、ささやかな文学コンテストが開催されたときに、審査員をしていたのだった。ちょうどその時期に、新刊エッセイ『十七歳で考えたこと』が発売されたので図書室で読んでみたところ、自慢話ばっかり書いてあり直ぐに本棚に戻した記憶がある。(この時期は原田宗典『十七歳だった』、大江健三郎「セブン・ティーン」と、自分の年齢に敏感に反応して律儀に読んでいた私。大江健三郎は難しくて読了するのがやっとだったけど。)その後に『僕って何』を読んだきり。この本は、ワセダ大学文学講義3部作のラスト。前2作は読んでないが、この本は単独で意外と楽しめた。そんな自分が少し憎い。内容は、中世的ロマンス/近代小説、私小説プロレタリア文学実存主義構造主義、といった二分法でもって、分かりやすく近代日本文学の流れが書いてある。もちろん、抜け落ちてる部分は大きいだろうが、入門の入門として自覚的に読むのだったら十分に使えるように思った。

松井洋子『赤い文化住宅の初子』(太田出版
中上健次でも舞城王太郎でも、方言の力というのは確かに感じる。表題作は、広島県が舞台。主人公の生活環境などを見ると一体いつの時代なんだか分からなくなるが、携帯電話が出てきたり怪しい新興宗教のような団体が出てきたりと、これは間違いなく現代日本なんだと分かる。本当だったらうそ臭くなってしまうのかもしれないが、それが広島弁によって緩衝されているようだ。初子のため息のつき方は、是非参考にしたいと思った(嘘)。
<0822追記:装丁は坂本志保。ナンシー関の本も何冊か担当してた>