町田康『屈辱ポンチ』読了。

「けものがれ」の方が入りこみやすかったか。アウトローだとか堕落した人間の生態や生活を描いた小説は、その反面、じつは倫理的なものを提示していることが往々にしてあると思う。この作品でも、主人公は表面上のだらしの無さの下で、しっかりモラルにこだわっている。ファミレスや酒屋での接客態度について怒りを覚え、女子高生の奇妙な振る舞いに戸惑いを覚える。ずばり「モラル」という言葉も2回出てくる。
この人の小説は、石川淳とか坂口安吾織田作之助とか、落語の語りだとかいろいろ影響関係はあるだろうけれど、話の展開とかからすると筒井康隆安部公房を連想するなあ。特に筒井康隆。ごちゃごちゃしたオノマトペの多用とか、饒舌でハイテンションなモノローグとか、世の中への怒り方とか、登場人者のおっちょこちょいのところとか、悲劇的状況への巻き込まれ方とか、会話の噛み合わなさとか。もちろん笑いの質も。安部公房でいうと『箱舟さくら丸』や『カンガルーノート』とかかな。

−−と書いてyahooで検索したら、山ほど町田/筒井の類似について書いてあるのね。例えばhttp://www.webdokusho.com/shinkan/0106/bunko0106meoto.htm
しかも三島賞の選考会で町田を筒井が大プッシュしたとのこと。町田体験3冊目にしてはじめて気づいた私の鈍さ。


〇日記タイトル変更「ハエ男の記」→「本を〜」