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◇『叫びとささやき』(監督:イングマール・ベルイマン)
秋のソナタ』と似た、血縁関係にある者同士の、表層的な信頼と愛情に結ばれた関係の下にある、嫉妬や裏切りや不信をテーマにした映画。この作品では母娘でなく、3姉妹の間に起こる、院隠滅滅とした、気のめいるような、神経症的な諍い。鮮烈な赤が、衣裳や血の赤が強調されている映像で、もちろん温かさではなく狂気を感じさせる色として観るものを不安にさせる。
◇『風の中の子供』(監督:清水宏)
清水宏といえば子ども、と云うくらいに清水作品の中の子どもは愛らしく、生き生きとしている。何よりも子どもが頻繁に出てくる。『有りがたうさん』では、話の本筋とは関係ないのにもかかわらず、しっかりと登場し、印象的な場面作りに一役買っている。その子どもに真正面から光が当てられている本作は、突貫小僧と爆弾小僧(両方とも役者名です)の演じる兄弟のひと夏の物語。馬車の荷台にちゃっかりと乗っかって、子どもが学校から帰って来るシーンから始まる。通知表をもたったばかり、明日からは夏休みである。二人の兄弟は、兄は成績優秀なのに対して、弟は1や2しかないという状態。母親から勉強するよう言われても、長いこと机に坐っていることが出来ず、直ぐに遊びに出かけてしまう。ある日、父親が私文書偽造の罪に問われて(濡れ衣を着せられて)警察へ引っ張っていかれてしまう。無実を信じる兄弟は、周りの子どもからのからかいや誹謗の言葉に怒りや悔しさを感じながらも、母親と3人で、父の帰りを待つ。やがて、働きに出なくてはならない母親のため、次男は伯父の家に預けられることになる。しかし行った先で、次男はますます落ち着かず、木に登っては実家の方を眺めたり、たらいにのって川を流されたり、曲馬団のテントに潜りこんでちょっとした稽古を受けたりと、叔父叔母をやきもきさせ、挙句実家に戻されてしまうのだった。

◇『恋も忘れて』(監督:清水宏)
主人公の女(桑野通子)はホテルのバーでホステスとして働いている。貧しいアパートに小学一年の息子(爆弾小僧)と二人暮しだ。息子は学校の友達から母親の職業のことでからかわれて、喧嘩をし、授業をサボるようになり、中国人の子どもたちなどと草むらで遊んだりしている。主人公は職場ではリーダー的な存在で、女主人への賃金交渉に先頭にたって臨むなどするが、そのために女主人は彼女を疎んでいる。かといって客に人気のある主人公を逃がしたくも無い女主人は、見張りの男を雇って、主人公らが他所へ逃げ出さないように見張らせる。主人公を見張る男()はアパートの近くに潜んでいるときに、女の息子に声を掛け親しくなる。やがて女とも言葉を交わすようになり、アパートの部屋でお酒をご馳走になったりもする。女と男は、一緒に暮らす約束を交わすが、金銭の都合などから直ぐには実行に移せない。男は船乗りの仕事をしっかりと2年間やった後に母息子を迎えにくる、そういう内容の書置きを残して立ち去ろうとするが、その時に息子が大熱を出して寝込んでしまう・・・・・・。
時間がなくて合計で7分ほど早送りすることになってしまったのが悔やまれる。早送りという作業は作品の勘所というか大切な場面がどこにあるのかという点を意識するという観点からは、役立つようにも思ったが。話の内容が分からなくなる危険から台詞の場面は飛ばす事が出来ず、しぜん台詞なしのシーンを飛ばすことになったのだが、台詞のないシークエンスほど美しいことが多いのだった。例えば女がダンスを踊るシーンや霧の中をアパートに戻ってくる女の姿とか。哀しい結末であり、改めて冒頭から見直して、再び子どもの顔を焼き付けい気持ちに駆られる作品である。