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・塚本晋也監督『六月の蛇』を観る。1人の女と2人の男。女は電話でこころの悩み相談を受ける、心裡カウンセラーのような仕事をしている。1人の男は女の亭主で、潔癖症でインポテンツなのかセックスレスの生活を続ける、会社人間。もう1人の男は、ヴァイブレーターなどの器具を専門に撮っているカメラマンで、死にたい、と電話をかけた相手がその女だった。カメラマンの男が女の自慰行為を盗み撮りしたことから映画は展開していくが、女を演じる黒沢あすかのエロを期待していると、はぐらかされた気になるかもしれない。初めは少しやらしくて、少しおかしい感じが、途中から意外な事に、哀しい話へと変っていく。所々、寺山修司の映画かと思うような奇妙なシュールな映像が差し挟まれるが、よく分からないのでそこは素通りして、三人の男女の行く末を見届けた。夫は神足裕司が、カメラマンは塚本晋也が演じている。神足裕司がはまっていたように思う。
・「蹴りたい背中」を読んだときにも感じたが、変態と純愛というのはそうかけ離れたものではないのかも知れない。問題は、二項対立の弊害と言うか、本来は対立するのではない概念が、勝手に正反対のものとして流通している。そしてそれに捉われている。それだけかもしれない。
再試験
・大学で再試験を受けてくる。物権。物権にさよならをいう方法はいまだに発見されていない。いや、さよならしなくちゃ。闘わなきゃ現実と。
・入浴剤、しかもドラッグストアで手に入るような普通の入浴剤でもって、味気ない日常にアレンジを加えようとするのはさもしい根性だろうか。月々2950円で生活改革をしようと思うのと同じくらい馬鹿げたことだろうか。ツムラ温泉科学プロジェクト、なるものが実行されている。
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・新聞経済面の企業・商品情報欄で、トンボ鉛筆から黒赤鉛筆が再発売されるということを知る。サイトを見ると一応、新発売らしい。
・文房具というのも、奥が深いというか、柏木博なんかの仕事(岩波新書や晶文社から出ている本)は面白そうなのだが、文房具関連の文献が載っているこちらのサイトを見ると、雑誌『モノマガジン』でも度々、文房具が取り上げられているようだ。『モノマガジン』ってオッサン臭い雑誌かと思っていたが、どうなのだろう。
・個人的には、中学以来ずーっとシャーペンで来て、大学に入ってからは板書なんかも全てボールペンになって、それが数年前から、本に書き込みするときは、シャーペンだと先が鋭すぎるのが嫌になって、鉛筆を使うようになった。万年筆など変に高級志向に走るのも嫌だが、数年前の給食人気のようなノスタルジーで使いはじめるのもどうかと思う。結局は実用とデザインのバランスということになるのだろうか。
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・橋本治『'89』を読んだ勢いで『ナインティーズ』(河出文庫)を読む。91年の衆院選前の状況や映画バットマンの鑑賞方法についてなど1部で語られ、2部では湾岸戦争の解説として、世界史(イスラムの歴史から欧州帝国主義云々といったとんでもないところまで飛んでいく)の話が結構な分量を割いて語られている。こういう歴史の先生がいたら良かったなあ。或る地域の或る時代について語るとき、別の時代との比較や対比をする方法と、その地域時代の内的な動向を詳細に検討する方法と2つあるとすると、橋本治がやっているのは前者ということになるだろうか。大塚英志の新刊が気になるが、大塚の方法はどうも後者のような気がする。
・小阪修平『イラスト西洋哲学史』(宝島社)読了。古い本だけど、手ごろな哲学史の本って意外に少ないような。